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経営・マーケティング

経営・マーケティングに役立つビジネスフレームワーク15選

ビジネスフレームワークは、企業の戦略策定や意思決定を支援するための有効なツールです。起業家にとって、これらのフレームワークを理解し、適切に活用することは、ビジネスの成功に直結します。

本記事では、起業家向けに経営・マーケティングの観点から主要なビジネスフレームワークを紹介し、それぞれの特徴や主な用途、具体例について詳しく解説します。

戦略策定・環境分析

SWOT分析

特徴

SWOT分析は、企業の内部環境と外部環境を分析し、戦略策定に役立てるためのフレームワークです。SWOTは、Strengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威)の頭文字を取ったものです。

主な用途

  • 戦略策定:企業の強みと弱みを把握し、外部の機会と脅威に対処するための戦略を策定します。
  • 意思決定支援:事業拡大や新規市場進出などの意思決定を行う際に役立ちます。
  • リスク管理:潜在的なリスクを特定し、対策を講じるための基礎となります。

具体例

あるテクノロジースタートアップがSWOT分析を行った例です。

  • 強み(Strengths):高度な技術力と専門知識、柔軟で迅速な意思決定プロセス、強力なパートナーシップ。
  • 弱み(Weaknesses):限られた資金力、市場での知名度不足、人材不足。
  • 機会(Opportunities):新しい市場の出現、技術革新による新製品の可能性、戦略的提携の拡大。
  • 脅威(Threats):激しい競争、規制の変更、経済状況の変動。

PEST分析

特徴

PEST分析は、政治(Political)、経済(Economic)、社会(Social)、技術(Technological)の4つの外部環境要因を分析し、ビジネス戦略に影響を与える要因を特定するフレームワークです。

主な用途

  • 外部環境の評価:企業の外部環境を評価し、戦略策定に役立てます。
  • リスクと機会の特定:ビジネスに影響を与えるリスクと機会を特定します。
  • 市場参入戦略の策定:新市場への参入戦略を策定する際に使用します。

具体例

フィンテック企業がPEST分析を行った例です。

  • 政治(Political):金融規制の強化、政府の技術革新支援政策、国際貿易政策の変動。
  • 経済(Economic):金利の変動、経済成長率の低下、消費者の購買力の変動。
  • 社会(Social):デジタルバンキングの普及、消費者の金融リテラシー向上、ライフスタイルの変化。
  • 技術(Technological):ブロックチェーン技術の進展、AIと機械学習の発展、サイバーセキュリティの強化。

5W1H

特徴

5W1Hは、Who(誰が)、What(何を)、When(いつ)、Where(どこで)、Why(なぜ)、How(どのように)の6つの質問を用いて、問題や状況を体系的に分析するフレームワークです。このフレームワークは、情報収集や問題解決の際に有効です。

主な用途

  • 問題解決:複雑な問題を構造化して整理し、具体的な解決策を導き出します。
  • プロジェクト計画:プロジェクトの目的や方法を明確にし、効果的な計画を立てるために使用します。
  • コミュニケーション:情報を明確かつ効果的に伝えるためのフレームワークとして活用します。

具体例

新製品開発プロジェクトでの5W1Hの活用例を見てみましょう。

  • Who(誰が):
    • プロジェクトチーム、製品マネージャー、開発担当者、マーケティング担当者
  • What(何を):
    • 新しいヘルスケア製品の開発と市場投入
  • When(いつ):
    • プロジェクト開始は2024年1月、製品リリースは2024年12月
  • Where(どこで):
    • 主要市場は日本国内、特に都市部
  • Why(なぜ):
    • 健康志向の高まりと市場の需要増加に応えるため
  • How(どのように):
    • ユーザー調査、製品デザイン、試作、フィードバックの収集と改良、最終製品のリリース

ポーターのファイブフォース分析

特徴

ポーターのファイブフォース分析は、業界の競争状況を評価するためのフレームワークです。5つの力(新規参入の脅威、代替製品の脅威、買い手の交渉力、売り手の交渉力、業界内の競争)から業界の魅力度を分析します。

主な用途

  • 業界分析:業界の競争状況を把握し、競争戦略を策定します。
  • 競争優位性の評価:企業の競争優位性を評価し、強化策を検討します。
  • 市場参入戦略:新市場への参入戦略を策定する際に使用します。

具体例

ヘルスケアスタートアップがポーターのファイブフォース分析を行った例です。

  • 新規参入の脅威:高い規制要件、資本集約的な事業モデル、ブランド認知の必要性。
  • 代替製品の脅威:既存の医療サービス、ホームケア製品の普及、テクノロジーの進展による新しい治療法。
  • 買い手の交渉力:患者の選択肢の増加、保険会社の価格交渉力、大規模病院の存在。
  • 売り手の交渉力:医薬品や医療機器のサプライヤーの力、専門人材の不足。
  • 業界内の競争:複数の競合他社の存在、技術革新の速度、顧客獲得コストの高さ。

バリューチェーン分析

特徴

バリューチェーン分析は、企業の価値創造プロセスを分析し、競争優位性を見つけるためのフレームワークです。企業の活動を主活動と支援活動に分け、それぞれの価値を評価します。

主な用途

  • 価値創造の理解:企業の活動がどのように価値を生み出しているかを理解します。
  • 競争優位性の特定:価値の高い活動を特定し、競争優位性を強化します。
  • 効率化とコスト削減:価値を生み出していない活動を見つけ、効率化やコスト削減を図ります。

具体例

製造業の企業がバリューチェーン分析を行った例です。

  • 主活動:調達、製造、物流、マーケティング・販売、アフターサービス。
  • 支援活動:企業インフラ、人事管理、技術開発、調達管理。

この分析により、製造プロセスの効率化や物流コストの削減が競争優位性の強化に寄与することが明らかになりました。

ビジネスモデル設計・評価

ビジネスモデルキャンバス

特徴

ビジネスモデルキャンバスは、ビジネスモデルを視覚的に表現し、設計・評価するためのフレームワークです。9つの要素(キーリソース、バリュープロポジション、チャネル、顧客セグメント、収益の流れ、コスト構造、主要な活動、パートナーシップ、顧客との関係)から構成されます。

主な用途

  • ビジネスモデルの設計:新しいビジネスモデルの設計や既存モデルの改善に役立ちます。
  • 戦略の明確化:事業の全体像を把握し、戦略を明確にするために使用します。
  • コミュニケーションツール:ステークホルダーとのコミュニケーションを円滑にし、ビジネスモデルの理解を促進します。

具体例

オンライン教育プラットフォームのビジネスモデルキャンバスの例です。

  • キーリソース [ KR ]:プラットフォーム技術、教材コンテンツ、教育専門家。
  • バリュープロポジション [ VP ]:高品質な教育コンテンツ、24/7アクセス可能な学習環境、個別化された学習プラン。
  • チャネル [ CH ]:ウェブサイト、モバイルアプリ、パートナーシップ。
  • 顧客セグメント [ CS ]:学生、プロフェッショナル、教育機関。
  • 収益の流れ [ RS ]:サブスクリプションモデル、広告収入、プレミアムコンテンツ販売。
  • コスト構造 [ CS ]:開発費用、サーバー運用コスト、マーケティング費用。
  • 主要な活動 [ KA ]:コンテンツ制作、プラットフォームの開発と保守、顧客サポート。
  • パートナーシップ [ KP ]:教育機関、コンテンツプロバイダー、技術パートナー。
  • 顧客との関係 [ CR ]:サポートチームによる個別対応、コミュニティフォーラムの運営、定期的なフィードバックの収集。

マッキンゼーの7Sフレームワーク

特徴

マッキンゼーの7Sフレームワークは、企業の内部環境を評価し、組織改革や戦略実行を支援するためのフレームワークです。7つの要素(戦略、構造、システム、共有価値、スタイル、スタッフ、スキル)から構成されます。

主な用途

  • 組織診断:企業の内部環境を総合的に評価し、課題を特定します。
  • 組織改革:組織改革のための指針を提供し、変革を支援します。
  • 戦略実行:戦略の実行に必要な組織的要素を整備します。

具体例

あるIT企業がマッキンゼーの7Sフレームワークを活用した例です。

  • 戦略(Strategy):市場拡大戦略、新製品開発戦略。
  • 構造(Structure):機能別組織構造、プロジェクトベースのチーム編成。
  • システム(Systems):業務プロセス管理システム、情報共有システム。
  • 共有価値(Shared Values):イノベーションの重視、顧客第一主義。
  • スタイル(Style):リーダーシップスタイル、コミュニケーションスタイル。
  • スタッフ(Staff):人材採用と育成プログラム、チームの多様性。
  • スキル(Skills):技術スキル、マネジメントスキル。

このフレームワークを活用することで、同社は組織の強みと課題を明確にし、戦略実行のための具体的なアクションプランを策定しました。

マーケティング戦略

STP分析

特徴

STP分析は、市場セグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)の3つのステップからなるフレームワークです。市場を細分化し、ターゲット顧客を選定し、製品やサービスの市場での位置付けを明確にします。

主な用途

  • 市場分析:市場を細分化し、ターゲット顧客のニーズを把握します。
  • マーケティング戦略:ターゲット市場に対する適切なマーケティング戦略を策定します。
  • 製品ポジショニング:競合他社との差別化を図り、製品やサービスの市場での位置付けを明確にします。

具体例

化粧品ブランドがSTP分析を行った例です。

  • 市場セグメンテーション(Segmentation):年齢、性別、ライフスタイル、購買行動に基づいて市場を細分化。
  • ターゲティング(Targeting):30代から40代の女性をターゲット市場として選定。
  • ポジショニング(Positioning):高品質で肌に優しい成分を使用し、エコフレンドリーなパッケージを特徴としたブランドとして位置付け。

4P(マーケティングミックス)

特徴

4P(マーケティングミックス)は、製品(Product)、価格(Price)、場所(Place)、プロモーション(Promotion)の4つの要素を統合してマーケティング戦略を策定するフレームワークです。

主な用途

  • 製品戦略:顧客のニーズに合った製品やサービスを開発します。
  • 価格戦略:市場競争力を維持しながら、適切な価格を設定します。
  • 流通戦略:製品を顧客に届けるための最適な流通チャネルを選定します。
  • プロモーション戦略:製品やサービスの認知度を高め、購買を促進するためのプロモーション活動を計画します。

具体例

飲料メーカーが4Pを活用した例です。

  • 製品(Product):健康志向の高い顧客向けに、低カロリーでビタミン豊富な新しいジュースを開発。
  • 価格(Price):プレミアム価格帯に設定し、高品質を強調。
  • 場所(Place):高級スーパーやフィットネスクラブでの販売を展開。
  • プロモーション(Promotion):健康雑誌やオンライン広告、インフルエンサーを活用したプロモーションを実施。

問題解決・意思決定

ロジックツリー

特徴

ロジックツリーは、問題を階層的に整理し、原因分析や解決策を見つけるためのフレームワークです。大きな問題を小さな要素に分解し、体系的に整理します。

主な用途

  • 問題解決:複雑な問題を分解し、根本原因を特定します。
  • 意思決定支援:選択肢を整理し、最適な解決策を見つけるための意思決定を支援します。
  • プロジェクト管理:プロジェクトのタスクや課題を体系的に整理し、管理します。

具体例

オンライン小売業者がロジックツリーを活用して売上低下の原因を分析した例です。

  • 売上低下の原因
    • マーケティング
      • 広告効果の低下
      • 顧客ターゲティングの問題
    • 商品ライン
      • 在庫不足
      • 商品の品質問題
    • ウェブサイト
      • ユーザーエクスペリエンスの低下
      • サイトの速度問題

このロジックツリーを用いて、具体的な改善策を導き出し、売上回復を目指しました。

PDCAサイクル

特徴

PDCAサイクルは、計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Act)の4ステップを循環させて継続的に改善するフレームワークです。

主な用途

  • 継続的改善:業務プロセスや製品品質の継続的な改善を図ります。
  • プロジェクト管理:プロジェクトの進行状況をモニタリングし、必要に応じて調整します。
  • 業績向上:企業の業績を向上させるための具体的なアクションプランを策定します。

具体例

製造業の企業がPDCAサイクルを用いて品質管理を行った例です。

  • 計画(Plan):品質向上のための具体的な目標を設定し、改善計画を策定。
  • 実行(Do):改善計画に基づき、製造プロセスの変更を実施。
  • 評価(Check):変更後の製品品質を評価し、目標達成度を確認。
  • 改善(Act):評価結果に基づき、さらなる改善策を実施。

イノベーション・成長戦略

ブルーオーシャン戦略

特徴

ブルーオーシャン戦略は、競争の少ない市場を開拓し、新たな成長機会を見つけるためのフレームワークです。従来の市場競争を避け、革新的な価値を提供することを目指します。

主な用途

  • 新市場開拓:競争の激しいレッドオーシャンから離れ、新しい市場を開拓します。
  • 競争回避:競争相手のいない市場でのビジネス展開を図ります。
  • 革新の推進:従来の枠にとらわれない革新的な製品やサービスを開発します。

具体例

サーカスの興行を改革したサーカス・デュ・ソレイユがブルーオーシャン戦略を実践した例です。

  • 新しい価値提案:動物を使わない、アートとエンターテイメントを融合させたショーを提供。
  • 競争回避:伝統的なサーカス市場から離れ、高級エンターテイメント市場を開拓。
  • 革新:舞台芸術、音楽、ダンスを組み合わせた独自のパフォーマンスを提供。

アナゾフの成長マトリクス

特徴

アナゾフの成長マトリクスは、製品と市場の視点から成長戦略を策定するためのフレームワークです。市場浸透、市場開拓、新製品開発、多角化の4つの成長戦略を提案します。

主な用途

  • 成長戦略の策定:企業の成長戦略を明確にし、適切なアクションプランを立てます。
  • 市場拡大:既存市場でのシェア拡大や新市場への進出を目指します。
  • 新製品開発:既存市場や新市場向けの新製品を開発します。

具体例

食品メーカーがアナゾフの成長マトリクスを活用した例です。

  • 市場浸透:既存製品の販促キャンペーンを強化し、既存市場でのシェア拡大を図る。
  • 市場開拓:新しい地域市場に進出し、製品を販売。
  • 新製品開発:健康志向の新製品を開発し、既存市場に投入。
  • 多角化:異なる業界(例:ヘルスケア市場)に新規参入し、新たな事業を展開。

組織管理・変革

バランススコアカード(BSC)

特徴

バランススコアカード(BSC)は、財務、顧客、内部プロセス、学習と成長の4つの視点から戦略を管理・評価するフレームワークです。

主な用途

  • 戦略の可視化:企業の戦略を明確にし、全社員に共有します。
  • パフォーマンス管理:各視点から業績を評価し、改善点を特定します。
  • 戦略実行:戦略の実行を支援し、目標達成を促進します。

具体例

製薬会社がBSCを用いて戦略管理を行った例です。

  • 財務視点:売上高、利益率、投資回収率を評価。
  • 顧客視点:顧客満足度、マーケットシェア、新規顧客獲得率を評価。
  • 内部プロセス視点:研究開発効率、製造プロセスの改善、品質管理を評価。
  • 学習と成長視点:社員のスキル向上、従業員満足度、イノベーション活動を評価。

GEマトリクス

特徴

GEマトリクスは、事業単位の競争力と業界の魅力度を評価し、ポートフォリオ管理を行うためのフレームワークです。9つのセルから成るマトリクスで、事業の戦略的位置付けを評価します。

主な用途

  • ポートフォリオ管理:複数の事業単位を効果的に管理し、リソース配分を最適化します。
  • 戦略的意思決定:各事業の戦略を評価し、成長戦略や撤退戦略を決定します。
  • 投資判断:事業の魅力度と競争力を基に、投資の優先順位を決定します。

具体例

コングロマリット企業がGEマトリクスを用いて事業評価を行った例です。

  • 高魅力度・高競争力:先端技術事業に投資を集中し、成長を加速。
  • 高魅力度・低競争力:ブランド強化や提携を通じて競争力を向上。
  • 低魅力度・高競争力:コスト削減や効率化を図り、収益性を維持。
  • 低魅力度・低競争力:事業の売却や撤退を検討。

結論

以上のビジネスフレームワークを理解し、適切に活用することで、起業家は戦略策定や意思決定の質を向上させることができます。それぞれのフレームワークの特徴や用途、具体例を参考にしながら、ビジネスの成功に向けた道筋を描いてください。

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